ホトンの最初の七姓
アラシャン(阿拉善)地域に住むモンゴル族ムスリムは、ホトン人と呼ばれています。アラシャンとはアラク・シャン、すなわち「まだらの山」を意味し、現代の内モンゴル自治区の最西端にあります。このホトン人の姓をまとめました。
ホトン人についての20世紀の報告では、それぞれ差異がありますが、以下の特徴は共通します。
①先祖は哈密からアラシャンに移住してきたテュルク系
②言語はモンゴル化してもイスラム信仰は維持
2002年の楊海英(大野旭)の実地調査では、ホトン人には七つの父系親族集団オボクがあることが報告されています。現地のモンゴル人やホトン人は、「ホトンの最初の七姓」と表現するそうです。
①アンディジャーン
アンディジャーンは、フェルガナ盆地東部の都市で、漢語では安集延と表記します。コーカンド・ハーン国から新疆に来た商人たちはアンディジャーン人と呼ばれていました。アンディジャーンの冒頭の音から、漢姓では安姓と名乗ります。
②バルグート
バルグートは、モンゴルの古くからの部族名です。漢姓では候姓や胡姓を名乗りますが、由来は不明です。
ジュンガル・ハーン国との関係性は不明ですが、「ジュンガル」はモンゴル語で「左翼」を意味するジェギュン・ガルに由来するので、漢姓は左姓を名乗っています。
④キルガス
キルガスはキルギスのことだと考えられます。キルギスをモンゴル語のキルガホ(断つ)に比定し、同音の段におきかえて漢姓としています。
⑤カルカス
漢姓は賀姓や何姓を名乗りますが、詳細は不明です。
⑥ホイト
ホイトは、モンゴルの古くからの部族名です。ホイトはテュルク語のホイ(複数形ホイト)が羊を意味するので、同音の楊を漢姓としています。
⑦セイラン
漢姓は謝姓を名乗りますが、詳細は不明です。
参考文献
[1] 楊海英「モンゴルとイスラーム的中国 -民族形成をたどる歴史人類学紀行」風響社 (2007)